八尾スローアートショー2009 〜地域とアートと学校と

 

 2004年から行なってきた八尾スローアートショーは、徐々にテーマが変わってきました。当初は「廃校舍」がテーマでした。魅力的な空間をもつ建物が、大した議論もされずに無くなっていくことを悲観していました。そこで校舎を使った芸術展をすることで、地域の方々に作品と同時に「校舎」も観てもらい、あらためて考えてもらう機会を設けたいと思いました。そういったことが地域づくりにも繋がるのではないかと考えたわけです。「壊すのはもったいない」という声が多く寄せられましたが、20042005年と使わせていただいた木造廃校舍は惜しまれながら「予定通り」解体されてしまいました。

 そのような経緯があって、2006年からは樫尾小学校の木造校舎で行なうことになりました。現役の小学校であったことから児童とのワークショップを試みたところ、その成果が学校側から大いに認められたのです。現役の小学校というのは、その地区にとってとても貴重なものであることをあらためて気付きました。「廃校」はその地域から小学校という「機能」が失われます。学校がないところに次世代は戻りませんし、これは過疎化に拍車をかけることを意味します。樫尾小学校は新しい校舎へ「移転」しました。廃校ではないのでこの地域から学校という機能は無くなりません。しかも3世代に渡り通った「旧木造校舎」も併存している。この状況はとても「ラッキーな状況」といえます。アートを使った地域づくりは多くみられますが、今、地域にとって必要なのは「作品」としてのアートというよりもアーティステックな視点によって新しい価値を生み出していくことであり、そうしたときにはじめて、アートは地域に大きな効果をもたらすと期待しております。

 この「学校という機能」が維持され、さらには新校舎と旧木造校舎も存在するという、「ラッキーな状況」を活かして、持続可能な創造性ある地域づくりのあり方を探っていきたいと考えています。

 

 

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